大道芸人インタビュー Mr.アパッチ 【後編】
—大道芸の難しさ、大変さはどういった部分ですか?
大道芸人みんなが感じていることだと思うけど、出会ったことのない人の足を止め、気持ちを引き付けること。自分は現在その「大変さ」をあえて人通りの少ない場所で行うことで磨き上げています。
大道芸で生きていくことを考えれば多くの人に集まってもらわないといけないんですが、その前にひとりの人にずっと見てもらうことに意識を向けると、気がつけば多くの人に囲まれている…となってるかも。
—その経験で何か結果として見えてくるものがあったり?
そうですね。この先もっといろんなことが見えてくるとは思うんですが…。いろんな人がいて、いろんなものを背負ってる人もいたりすると思うんです。でも、芸をみてもらっている時間は背負ってる荷物をおろしているのではないかなと。それは本当に意味のあることで、イベントでは感じることができない大道芸だから直接感じれることだと思います。僕は楽しんでもらえる“芸”を持っているんだから366日ショーをする必要があると思ってます。
—アパッチさんにとって大道芸の魅力とは、ずばり?
その場にいる人たちがひとつになれる、一体感が得られるところが大道芸の大きな魅力。チケットがなくても、ひとりであっても、その輪の中に入って、その場の空気を楽しめる。そういうものって、他にはなかなかないような気がするんです。なので、そういう大道芸の持つ力を、何か世の中のために使えないかと。ちょうど今、福祉活動を始めようとしているところです。
—確かに、一体感が得られるというのは、人の気持ちを癒す力になるかもしれないですね。もうどこかの施設に行かれたのですか?
何件か行きました。また自分のブログでそういうアナウンスをし始めオファーを待っています。福祉活動って自発的じゃないと仕事ではないので。また「見たい」と求められる声がないと、ただのやさしさの押し売りになるので、そのタイミングが合うのを待っています。
—では、アパッチさんのプライベートについて。普段の練習はどこでどのようにされているのですか?
市営体育館や家の前の通りで、主にジャグリングの練習をしています。自転車の感覚は身体で覚えているでそれほど練習しなくても大丈夫なんですが、手先を使う技は毎日やらないと感覚が狂うし、鈍るのも早い。
あと、本を書いてます。自分が感じていることをひとつの作品にしたいと。ただ、いつできるか…(笑)
—身体のトレーニングや食事など、パフォーマーとして心がけていることは?
すっと引き締まった“凜とした身体”が好みなので、筋肉がつき過ぎないように筋トレなどはとくにしないです。食事は、近所の中華店のお弁当バイキングがあって、それを山盛り詰め、昼・夜食をまかなってます。しかも500円なので経済的にも大助かり(笑)。あとは規則正しく起きて寝るのが健康の秘訣。ぼくは朝8時頃起きて、できるだけ部屋の掃除をするんです。1日を始めるのに気持ちがいいですよ。
—アパッチさんの好きな街を教えてください。
横浜は、景色がロマンティックで洒落てて、やっぱり好きですね。港の風景、夜景、どこをとっても“恋人たちの街” 。以前はずっと千葉に住んでいたのですが、同じ港のある町といってもそっちは「漁港」、漁師の町みたいな。それも味があるかもしれませんけど、愛を語り夢を語るならやっぱ横浜だろうと(笑)。ただ、そんな横浜も一歩路地裏に入ると戦後の昔を彷彿とさせる風俗ネオン街があったり。そういう新しいもの・古いもの、現在と過去が入り混ざった混沌とした雰囲気が、自分が気にいってるところです。
—最後に、旅してみたい、行ってみたい場所を聞かせてください。
来年はバックパッカーでアジアを旅してまわろうと思います。大道芸をしてまわるのではなく、ひとりの人間として世界を見たいという感じかな。自分の視座を鍛え直すという意味で、言うなれば人生修行の一環です(苦笑)。
大阪市出身。テレビ東京の番組「TVチャンピオン・ジャグラー王選手権」初代優勝者として、日本でジャグリングブームに火をつけた第1人者。16歳からBMX(自転車)を始め、コンテスト優勝をきっかけにイベント活動を行う。以後、ミュージカル、サーカスなど多岐ジャンルに表現活動の場を求め、1年間上海雑技団に留学。当初ダイナミックなBMXパフォーマンスに“ストーリー性“を盛り込んだショースタイルを展開していたが、現在はさらに“笑い”とハイレベルなテクニックで人気を集める。2009年7月から横浜大道芸に参入。
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