大道芸人インタビュー みぎわ 【後編】

バリエテをまわって仕事ができたら。これからの挑戦ですね。

─今後の活動についてお聞かせください。

大都市の大きなシアター、たとえばオペラ座とかの近くには“バリエテ”っていって、バラエティっていう意味の小さな劇場があるんです。

一晩に10数名の芸人が7~8分ずつ芸を見せるバラエティ専門劇場なのですが、ドイツでは映画館へ行く感覚で劇場にお客さんがチケットを買って行く習慣があるらしいのです。
今後はそのバリエテに出演したいなあと思ってるんです。

G.O.P(ガー・オー・ペー)という事務所がバリエテの芸人のブッキングをやっているんですが、昨年ドイツに行った時に名刺はしっかりともらってきたので、自分の動画を送って、こういう作品をもってますっていうアピールを常にしていこうかなって。

バリエテをまわって仕事ができたら、劇場だけでごはんが食べられるようになれるし。挑戦ですね。

実を言うと、私、大道芸はいまだにちょっとニガテなんです。

─どういった所が苦手なんですか?

劇場だったら、いきなり私の世界から始められますよね。
暗転からばーっと照明がついて、私の世界を超然として見せることができる。
すでに状況がこしらえてある上で始められるんですが、大道芸はそうじゃない。

実は数年前は山下公園で大道芸をやってたんですよね。でも萎えちゃって。
自分の作品を見せる前にまずお客さんを集めなきゃいけないんですけど、私にはそういう芸がないんです。

大道芸がうまい人はものすごくうまいんですよね。
惹きつける話芸だったり、次々と繰り出すマジックやジャグリングで興奮を途切れさせない。
だんだんと中へ中へお客さんを惹きこんで、最後に大きな技をやってがっつり投げ銭をいただく、という大道芸の綺麗なパターンの型に私の芸はハマらないんですよね。

私が歌いながらマジックをやるっていうのは違うじゃない。

本当はもっとドラマティックなステージをやりたいんだけど、大道芸は直接的にお客さんとボールの投げ合いをやってかないと難しい。

でも、最終的には舞台を目指してるからといって、大道芸は必要ないっていうのは違うと思ってる。
大道芸であれ、舞台公演であれ、自分の世界観を深く作りこんだ作品を魅せるっていうことにはアーティストとして必要なこと。

そう思って、この夏だけ山下公園に出ることにしたんです。

上野公園でも大道芸をやってるんですが、上野では投げ銭箱を最初において、お散歩している人に向かってアコーディオンを弾くだけでそれなりに稼げるんですよね。
平日でも通りに人の往来があって、やりやすいんです。

横浜にも、大道芸をやっていい場所で上野みたいなところがあればいいのになあって思います。
山下公園だと、とにかく広いから大きな声で「やるよー!」って言わないといけない。
できれば象の鼻とか、赤レンガとか、伊勢佐木町とか野毛とかでできるといいなあって思ってます(笑)

古い建物が残ってて自然の環境も残ってて、街並みがヨーロッパみたいに美しくていいよね。

─みぎわさんは横浜在住なんですよね。

横浜に住み始めて5年目。
最初は丘の方に住んでいたのですが、今は元町に住んでいます。

その前は東京に15年くらい住んでいたんです。
千駄ヶ谷の風呂なしのアパートに住んでたんですけど、取り壊して風呂付きのマンションに建て替えることになっちゃって。

前の家は、楽器の練習をすると怒られるんですよ。
東京ってすごい密集してるでしょ、だから、裏の人とか下の人とか、四方八方怒られて(笑)
練習はカラオケ屋さんでしていたんですけど、引越しを機に家で練習できたほうがいいので、楽器演奏できる家を探したんです。

でも、楽器演奏できる家って東京だと家賃高いんですよ。
それで比較的家賃の安い横浜に引っ越してきました。

家賃が安いのもあるけど、何よりこのロケーションだよね。

元町とか山下公園の界隈は、古い建物が残ってて自然の環境も残ってて、街並みがヨーロッパみたいに美しくていいよね。
同じ住むならね。気分がいいほうがいいもんね。

みぎわ(ミュージック・クラウン)
アコーディオンとオペラで綴る狂気のオペラ。見ている人も参加してか奏でるオペ ラの名曲もみぎわさんの手にかかれば エンターティメントに変わってしまう。

ヨコハマ大道芸出演スケジュールはこちら

取材・文・写真/木村 綾