平成18年3月に「大道芸の街・ヨコハマ」を目指して設立されたNPOヨコハマ大道芸。ヨコハマの街を、そして大道芸を愛する仕掛人おふたりに、ヨコハマ大道芸のルーツ、ヨコハマの魅力、そして未来にかける夢をうかがいました。
新村 輝昭 <ヨコハマ大道芸実行委員会事務局長> 新村 輝昭 <ヨコハマ大道芸実行委員会事務局長>
1942年、東京都出身。成蹊大学卒業後、自動車業界、玩具業界を経て、2000年12月より野毛大道芸実行委員会のひとりとして同フェスティバルの発展に貢献。2009年9月に有限会社ヨコハマ大道芸を設立。趣味は人間ウォッチング、ヨット。特技は眠ること。
福田 豊 <ヨコハマ大道芸プロデューサー> 福田 豊 <ヨコハマ大道芸プロデューサー>
1941年、中華人民共和国生まれ、横浜市出身。成蹊大学卒業後、電通PRセンター入社。退社後は「料理は最良、心は不良」をモットーに家業の中華料理店「萬里」を営む。野毛大道芸の仕掛人のひとりとして活躍し、現在はヨコハマ大道芸のプロデューサーとして腕を振るう。趣味は貯金と読書。特技は嘘をつくこと。

「ファーストタイム、オンリーワン」の大道芸フェスティバル

─ヨコハマ大道芸を設立されたきっかけは?

新村 もとは野毛から始まっているんです。
野毛という街は、戦後、食料不足で貨幣がなんの価値もなくなった時代に、闇市として栄えた場所。その後の高度経済成長期には、日本で一番の窓口になっていた横浜港を出入りする人たちや、京浜工業地帯で働く人たちにとっての娯楽街だったんです。
それが、京浜線の延長や横浜みなとみらい21の開発によって人の流れが変わってしまった。
このままではまずいね・・・という流れになりました。
福田 それで、野毛がいちばん輝いていたときを再生しようと考えたのが大道芸です。
大道芸というのは「投げ銭」だから、値段を付け放題、握り放題。闇市と同じですよ(笑)。
それに日本中どこにも大道芸をメインにしたフェスティバルをやっているところはなかった。
学校でやっていない、会社でもやっていない、どこにもないものを見せる。「ファーストタイム、オンリーワン」です。
見たことないものだから、電車に乗ってたくさんの人が来てくれました。

ヨコハマ大道芸 プロデューサー×代表インタビュー

─野毛というひとつの街から始まって、いま横浜全体へ広げているのですか?

新村 かつては日本の窓口だった横浜港だけど、いま日本で最も輸出輸入が多いのは成田。船と飛行機では運ぶ物の単価が違うからね。
横浜港の役割はもう、工業じゃない。そういう時代は終わったんです。
福田 ただ横浜というのは港町だから、人が出入りをしないと活性化しない。
だから、どうやって人に来てもらうのかというのを考えないと、横浜の未来はないと思うんです。
その道具として、大道芸はまだまだ武器になると思っていますね。

常に新しくて面白いものを 提供することが大切

─大道芸と横浜の相性はよさそうですね。

新村 これ以上、相性のいいところはないですよ。程よい大きさで、キレイなスポットがいっぱいある。
福田 東京は莫大な情報を発信するけれど、生の演芸が気軽に観られないんですよ。
もちろん高いお金を払えば観られるけどね。
その点、大道芸は投げ銭。横浜は人口も多いし、首都圏からのアクセスもいい。空き地もまだ多いから、今後、大道芸人に限らず、音楽や演劇などをする人たちの稽古場など芸術活動をできる場所を作って行ける可能性もある。
すると、さらに芸人が集まってくるようになりますから、文化的な発展が期待できますよ

ヨコハマ大道芸 プロデューサー×代表インタビュー

─おふたりは野毛大道芸を大成功させた実績がございます。秘訣はあるのですか?

福田 先ほども話しましたが「ファーストタイム、オンリーワン」ですね。
人間も地域も会社も、なにも変わらないで、永遠に儲けられるなんてことはないんです。
常に新しくて面白いものを提供するということが大事。
野毛のときは最初、ヨーロッパやアメリカ、ブラジルなどから芸人を呼んでいました。その次はちょうどソ連が崩壊したから、モンゴルやウズベキスタンなど、それまで国交のなかった国から呼んだり。
世界には見たこともないカラダの動きや芸をする人たちがたくさんいるんですよ。
今狙っているのはインドやカンボジア。インドにはカースト制度がまだあって、パスポートを持っていない人たちも大勢いる。
カンボジアのある村の田舎サーカスには面白い剣呑みがいるらしいだよね。
今後アジアの経済発展が進んで整備されたら、そういう芸人を呼びたいですね。

─どのようにして芸人さんを見つけるのですか?

新村 たまたまフランスでサーカス学校の教師をしていた人が野毛に住み着いていたり、旅をする友人がサーカスが好きで、いろんな国に行くたびに見つけてくれたり。そうして集まった芸人たちの口コミで、海外から日本にくると、必ず横浜に立ち寄るというネットワークもできたりしています。

大道芸は人に勇気を与えるもの

─大道芸の魅力はなんだと思いますか?

新村 「自殺をしようと思っていたけど、偶然大道芸をみて、もう一度がんばってみようと思った」という声をもらうこともあります。
芸に感動したのか、彼らの一生懸命な姿に感動したのかはわかりません。
でも、映画や舞台のように、先にお金を払って観るものではないから、何か心を動かされて立ち止まる。
それが、人に勇気を与えるものなのかもしれませんね。

福田 人間というのは、すべてフリークなんですよ。つまり異形のもの。地域も会社も、国も。だから、「オンリーワン」なんです。
いかにフリークを表現するのかが、まちおこしになると私は思っています。
大道芸はフリークの象徴。人がやったことのないものをやるから、かなりきわどいし、みんな変わり者ですよ(笑)。
すぐに文句を言ったりするけど、その文句がまた面白いの。
まだまだ、世界中、いや、日本中にもたくさんいると思いますね。

ヨコハマ大道芸 プロデューサー×代表インタビュー

─これからのヨコハマ大道芸についてお聞かせください。

新村 野毛町も伊勢佐木町も、元町や中華街も、ヨコハマの街中が参加できる「ヨコハマ大道芸」をやりたいですね。
福田 大道芸というと、火を投げたり逆立ちをしたりするのをイメージするだろうけど、道でやればなんでも大道芸。マダガスカルの絶壁に生息する手と脚が長い猿がいるらしんだけど、猿使いがその猿を使ってランドマークタワーを登らせるとかね、ヨコハマという街をつかって、面白いことをしたいですね。