大道芸人インタビュー 奥田優子 【前編】

福岡県出身。クラウンカレッジ三期卒業生。明るくキュートなジャグリングは、常に観客を笑顔をにしてくれる。ヨコハマ大道芸では主にグランモール広場にてショーを行っている。同じジャグリングの川原彰と共にショーを行うことが多く、奥田・川原ペアは根強いファンが多い。
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大道芸人インタビュー 奥田優子 【前編】
【前篇】興味と好奇心がこの世界に入ったきっかけ。

仕事にしようとか、もともと憧れていたとかじゃなく、純粋に「どんな世界なんだろう」っていう好奇心だけ。

─奥田優子さんが芸の道に入ったきっかけを教えてください。

クラウンカレッジに通っていました。私は一番最後の三期生。ヨコハマ大道芸にもクラウンカレッジ卒業生はたくさんいますよね。でも、三期生で横浜近辺で活動している人はあんまりいないかもしれないですけど。

─クラウンカレッジにはなぜ入ったのですか?

24歳までテレビ番組の制作会社にいたんですが、たまたま仕事でクラウンカレッジに取材することがあったんですよね。
私は直接その取材には関わっていなかったんですが、その取材班から「クラウンカレッジの卒業公演がありますよ」って聞いて舞台を見に行ったんです。

それまでは、全くクラウンや大道芸の知識もなかったし、見たこともなかったんです。
当時はまだ、あまり大道芸は盛んじゃなかったんですよ。やっていても外国のパフォーマーで、見る機会も少なかったから、私にとっては全く未知の世界だったんですよね。

クラウンカレッジの卒業公演を見たとき「ああ、こういうのがあるんだ、おもしろそうだな」って一瞬で興味が湧きました。

偶然にもクラウンカレッジ一期生に知り合いが居たので、その知り合いに話を聞いたら「誰でもやりたかったら、多分入れるよ」みたいな感じだったので、そのままクラウンカレッジに入りました。

別に仕事にしようとか、もともと憧れていたとかは全く無くて、純粋に「どんな世界なんだろう」っていう好奇心だけだったんですよね。
まだ若かったので、あまりなんにも考えてなかったんでしょうね(笑)

─卒業をして、芸を仕事とするようになったんですよね。

テレビの仕事を辞めてクラウンカレッジに入ったんですけど、色々な事を学んで覚えて卒業したらまたテレビの仕事に戻ろうと思ってたんです。
でも、やっぱり不思議な世界なんですよね。今まで自分が知らなかった世界だったから、すごく楽しかった。
当時はバブル期でしたし、イベントも盛んだったんで、大して何もできなくてもなんとなくクラウンの仕事でやっていけたんです。
クラウンカレッジから依頼されたお仕事がほとんどだったし、大してお金ももらわないので、アルバイト感覚でクラウンの仕事を続けていたんです。

大道芸にこだわりがあったわけじゃなかったんです。「大道芸人になろう!」なんて全然思ってなかった。

─クラウンから大道芸への転身は何がきっかけですか?

(クラウンカレッジの)一期生の中でも、大道芸を始めた人がちらほらと増えてきたんです。
クラウンのイベントの仕事もやりつつ、山下公園とかで大道芸をやってる人もチョコチョコいて。それを見ていて「ああこういうのもあるんだなあ」って。

─横浜で大道芸をスタートさせたんですね。

なんで横浜だったんだろう…?
当時は、「大道芸といったら横浜」っていう感じだったんですよね。

それで、なんとなく先輩の流れで大道芸を始めました。
大道芸と並行してクラウンのイベントもやってたんですけど、クラウンのイベントがだんだん減ってきたこともあって、大道芸がなんとなくメインになってきて…っていう流れです。

クラウンカレッジの先輩達が、大道芸やイベントやいろんな道の流れを作ってきてくれたんですよね。私はその流れに乗っかって行っただけ。
だから、大道芸にこだわりがあったわけじゃなかったんです。「大道芸人になろう!」なんて全然思ってなかった。
もし私が三期生じゃなく先輩がいない立場だったら、大道芸はもうやってなかったかもしれない(笑)

─川原さんと一緒に始められたのはいつ頃からですか?

川原彰はクラウンカレッジの二期生で、私の一期上なんですが、たまたまクラウンカレッジのイベントで一緒に仕事をすることが多かったんです。
いつも二人っていうわけじゃなくて何人かのクラウンと一緒に出ていることもあったんですが、まあ何かと一緒にやる機会が増えていったんです。
一緒にネタを色々作ったりしはじめて、気づいたらなんとなく二人でやっていたっていう。

─奥田さんと川原さんってコンビではないんですか?

実はコンビじゃないんですよ。だから、未だに私たちコンビ名もないですし(笑)
たまたまお互いクラウンの仕事で一緒になる機会が多くなったから、っていうだけの自然な流れだったんで「じゃあコンビを組もう」とか「一緒にやろう」とかいうので始めたわけでは全然なかったんです。

─でも、それで10年以上も一緒にやってきたんですよね。

そうなんですよね。
10年以上一緒に続いてきたんだし、今は、私は一人ではほとんどやっていないし、ヨコハマで大道芸やるときは彼がやるから「じゃあ一緒に」ってやらせてもらっているので、「じゃあ、いい加減コンビ名をつけたらいいんじゃない?」という話もあったんですよ。
でも「いやあ、でもコンビじゃないしねえ」みたいな(笑)

─子供の心をつかむのが奥田さんはお上手ですよね。

実は私、子供昔嫌いだったんですよ(笑)

でもこの仕事をやるようになって子供を好きになったんですよね。
子供って純粋じゃないですか。かわいいなあって思ったことなんて、この仕事を始めたころまではあんまり思ってなかったから。大道芸見てる子供ってすごい可愛いでしょ。子供に助けられてることってすごいありますよね。

─奥田さんがショーをするに当たって心がけていることなどはありますか?

なんか、こんなこと言っちゃいけないと思うんですけど、ここだけの話、まあやっぱり歳と共に体力的にもいつまでも同じことをやってちゃいけないなっていうのはあるんですよ。

練習するだけでも体力を使って疲れちゃうんです。そうすると本番キツイじゃないですか(笑)
普段から練習してると続かないんです。
なので、練習はほどほどに、いかに本番でも体力を使わない方向に持っていけるか…!とか考えちゃう(笑)
ねえ、これは本当お客さんには言えないです(笑)

今まで何度となく転職も考えてるんです(笑)

私、今年もう45歳なんですよ。正直40代までこの仕事をやってると思ってなかったんです。

来年になって「すいません、体力ないんで、ほんともう動けないんで辞めます」ってこともあるんじゃないかって。
だから、今まで何度となく転職も考えてるんですよ(笑)

─転職するとしてもどうするんですか?

そうなんですよねえ。
私、なんのキャリアもないし、気づけば何ができるかっていうとコレ(ジャグリング)の他に何もないから(笑)
「じゃあ他に何かやりたいことある?」って聞かれても、仕事で「絶対にこれができる!」とか得意な分野があるわけでもないから、転職もしようがないなあって(笑)

─でも誰にもできない事があるじゃないですか!

いやいや!そんな事ないんですよね。
たまたま、時代の流れで運良く仕事になってきちゃったがために、正直今コレじゃあいけないんじゃないかなあって思ったりもするんです。

でも、震災があってイベントもずいぶん無くなった中で、ヨコハマでは普通に大道芸がやれるのでありがたい事なんですよね。これから厳しい時代になっていくんだろうな、っていう実感があるからこそ、出来る限りは続けていきたいしとは思っているんですけど、でもその反面「いや~ちょっと大丈夫かな?」って。
そんな感じで、日々葛藤と闘ってます(笑)

─奥田さんが体に気を付けていることはありますか?

実は、わたし腰痛がひどいんですよ。
なので、週に一回スポーツトレーナーさんについて、メニューを作ってもらってトレーニングしているんですね。
それがなかったら、私こんなに動けてないかもしれない。
他にもスポーツジムにも週に2~3回は通って筋トレとか体を動かしてますね。
じゃないと体力が全然もたないから(笑)

─他に体型を維持するためにしていることはありますか?

体重が増えないようには気を使ってます。
歳と共に、食べたらすぐ太っちゃうし、すぐ動けなくなっちゃうんですよ。
動けないのはまずいので、動けるくらいには体を作っておかなきゃ、くらいなので、「ダイエットしよう!」みたいにストイックなことではないんですけど。

私、食べること大好きなんです。仕事終わったあとにビールのんで、おいしいもの食べる、やっぱりこれが一番ですよね。これだけは絶対やめたくないから、だから食べることを我慢するのはいや。ひもじい思いはしたくないので(笑)

だから、美味しい物を食べるために量をなるべく減らして、食事には時間をかけるようにもしてますよ。

何年か前はものすごいたくさんを短時間でガーって食べてたんですけど、最近は20分で食べてたところを時間がある時は1時間くらいゆっくりと時間をかけて食べてます。

量も1日5食くらいに分けて少量ずつ食べるんです。
3食がっつり食べてたものを5回に分けるイメージ。
例えば、朝起きたら食パンを1枚だけ食べる。2~3時間経って小腹がすいてきたら、甘いものをちょっと食べて、お昼にパスタとかをちょっと少量食べてってかんじです。

でも夜になるとビール、飲みたくなっちゃうんですよね~(笑)
だからその代わりに、なるべく炭水化物は取らずに、おつまみ感覚でおかずをゆっくりと食べる。

この食生活にすると意外と少量でも満腹感が出てきて、それでけっこう体重も減ったんですよ!
なので、なるべくこの食生活を保つようにしています。

─川原さんに持ち上げられたりすると、太ってたら大変ですものね。

そうなんですよね~。
…まあ、そこに関してはあんまり気を使ってないんですけど(笑)

後編につづきます。

取材・文・写真/木村 綾

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